秋晴れの週末、ミューズ所沢でジャン=イアン・ケラスの無伴奏チェロ・リサイタルを楽しむ。
横浜から会場の所沢まで、晴天のわりに空いていた車中で日頃の睡眠不足を解消し(乗換駅にはピタッと目が覚める特技を駆使)たっぷり片道2時間。 遠路遙々には訳があって、プログラムにブリテンの無伴奏チェロ組曲があると知って即チケ取り。ケラスの演奏はもとより、コーダイ&ブリテンの曲の素晴らしさが想像以上で納得の演奏会となった。 ***purogram**** バッハ 無伴奏チェロ組曲第1番 コーダイ 無伴奏チェロ・ソナタ 作品8番 --intermission-- ブリテン 無伴奏チェロ組曲第1番 バッハ 無伴奏チェロ組曲第3番 --encore-- バッハ 無伴奏チェロ組曲4番から プレリュード アルマンド クルターク シャドウ(・・・作曲者名はたぶん聞きとれていたら。しかも瞬間の音楽であった) ケラスのチェロの響きは柔らかく艶やかで無駄な自己主張が無い。そのせいか、やや精細を欠いたバッハにあれれ!?と肩透かし。弦を一本切るほどの熱演だったのにちょっと納得のいかないバッハの1番。 2曲目のコーダイから本領発揮(・・と思われる)。いっきに音に艶やかな色彩と香りが添加される。一挺のチェロの持つ音色の豊かさを見せ付けられるようなチェロ・ソナタ。特に第2楽章の東洋趣味を帯びた幽玄な旋律とそれに続く無窮動風なパッセージに息を呑む。ケラスは『野生の馬が駆ける』イメージとパンフにあった。 コーダイの豊かな音の洪水に、和音を奏でられない弦楽器(ハープは除いて)が和音以上の音の重なりや可能性に挑んだ曲、それが無伴奏なんじゃないかと思わされたほど。 短い休憩を挟んで、ブリテン。 これはコーダイから一転、動から静の世界。 コーダイのような耳に心地良い旋律は影を潜め、まるで幻想絵画の画集を捲っていくような不可思議な音の世界。 以前からブリテンの曲を聴いて繰り返し思うのはその音のシンプルな響きの美しさ。虚飾を排したミニマリズムな音の世界は日本の古典芸能(能、花道、茶道・・・)の世界にも通じる。 実際、ブリテンには『カーリュー・リバー』というオペラがあって、これは能の『隅田川』を見て着想を得た曲との事。 この無伴奏チェロ組曲にもはっきりと現れているように感じたのは、西洋的な劇性をもたない、「不在」を反映した一種の無常観。惹かれるのはここかな、、と思う。 そんな意味からも音楽を内なる場所で響かせるケラスの演奏は相応しかったかも。 同行の友人談、『お茶の先生のような・・』ケラスに頷く(笑)和服、似合いそう!!!会場には始終お香の香りが立ち込めていた!?!! そして最後のバッハ3番。 この曲は大好きなので余裕で聴けた。1番よりチェロの音もよく響いて(特に低音がぐっと良くなった)締めに相応しいバッハとなった。 会場を後にするとヒンヤリとした風にのって木犀の香りが漂い、音楽の秋の到来を感じる。
by lime2005
| 2007-10-07 16:16
| 音楽
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