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忘れっぽい天使・・・

パウル・クレーは大好きな画家である。
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晩年の作品に天使を描いた素描28枚があるが、中でも『忘れっぽい天使』vergesslicher engel は特別好きな作品である。初めて見たのは亡父所持の画集だったが、シンプルなラインで描かれたいたずらっぽい天使の愛らしさの虜になって、つい模写をしてみたくなる作品である。

クレーは複雑な線や面や空間を描きながら時間の経過と共にそこに浮かび上がるものに命を吹き込んだ画家である。何かの対象を描く画家とは一線を画している。
彼の言葉を借りると『芸術は見えるものを再現するのでなく、見えるようにする行為』なんだと言う。
私的解釈では蕪村が徹底した写実(写生)の詩人であったのに対照的な《芭蕉》に近い詩的世界を持った画家であると思う。芭蕉の力強いフレーズがクレーの線に思える。

先日吉田秀和全集を読んでいたら、クレーに触れた古いエッセイの中に、この『忘れっぽい天使』を例にクレーの描き方を読み解く興味深い記述があった。
吉田先生はこのシンプルなラインの描かれた順番を推理している。対象を描くなら天使の顔から描かれるのが普通であるが・・・
左肩→左腕→右翼→左翼→左腕→手→頭→顔の流れるようなラインで繋がれて天使が浮かびあがったのだと言う。生成の過程を生命として描かれた作品、それがクレーの絵の世界であるとも・・。
同じ目で他のクレーの作品を眺めると楽しい発見がたくさんあって、益々クレーの絵の魅力に惹かれる。

ところで、私にはその生成の過程を経て造形された天使にタイトルをつける段になって、クレーは我々に大切なメッセージを込めたに違いないと確信する。
おそらく描かれ方や作品の大きさは比較にならないものの、ピカソが『ゲルニカ』に込めた思いと同じものをこのタイトルに感じるのである。

クリスマスに寄せて思う。
忙殺され繰り返す単調な日常生活のほんの一時に『祈り』を持ちたい。
朝の台所の片隅で、夜の眠りに落ちる布団の中で・・・
場所や時間に囚われず、この天使のように目を伏せて、手を組んで、祈ろう。

この世から、人が人を傷つける行為が永遠になくなりますように・・・・
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by lime2005 | 2005-12-25 12:38 | 日記
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