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北斎ロマン・・・

昨年末、祖父がこの絵を前に宣言。
たぶん、北斎じゃないかと思う・・・』その場で一同、一驚を喫す005.gif

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何でも祖父が物心ついた頃にはすでに家にあって、表層がボロボロになってきたのを期に押入れの奥に半世紀は眠っていたものらしい。骨董好きの曽祖父が買い求めたものらしく、他にも鶴図と亀図があって、こちらは伯母の手元に。

じっくり眺めると北斎らしい一連の錦絵とは趣が異なり、絹に墨絵風の肉筆画で、『北斎画』と署名、落款も確認出来る。
季節は夏の昼下がりだろうか、夏雲を抱いたすっきりとした富士。この雲は富嶽三十六景『山下白雨』の稲妻の上に輝くあの夏雲と同じだと思い至る。

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北斎に詳しい訳では無いが、最晩年の遺作に近い『富士越龍図』に枯れた筆致が似ているので、80代後半から90歳(北斎没年)にかけての作品だと直感した。
170年余りの時を経て絵は青息吐息と言う感じ。とにかく痛みが激しく、富士の山頂から空にかけてシミも多数確認出来る。残念ながら財産的価値は期待出来まい(笑)



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パソコンでちょっと調整をかけてみると汚れた部分が綺麗に浮かび上がる。
何とかこの汚れを取り除く方法は無いのか・・・・。

その後、『後はまかせる』と祖父から絵を託されたので、取りあえず専門家に相談する事にした。
夫の友人で古美術修復業のⅠ氏のアトリエに絵を持ち込み真贋含めて意見を求める。

絵を10分程食い入るように見つめたⅠ氏は
『間違いなく北斎の絵だと思う。最初は掛け軸だったはずなのが、痛んできたので表装を変えて額縁仕立てにしたのが敗因だったと思う。掛け軸として絵を巻いてしまっておけば年代分の痛みだけで汚れは防げたはず・・・』と、なるほど。

今はこういった古い絵を修復出来る人は数える程しかいないらしく、取りあえず見積りを含めて京都に絵を送る事にした。職人さんは京都に4~5人いらっしゃるそうで。

方法は水洗なんだそうだ。『墨なのに大丈夫?』とお聞きしたら『もう炭化しているので流れる事はないし、絹本を貼り付けてある和紙から注意深く剥がして少しずつ洗っていく』とのこと。
絵自体がその作業でダメになる事もあるので成功率は半分とか・・。

何かの縁あって手元に届いた北斎。
それまで日本には無かった『風景画』という概念を絵に取り入れて風や波濤や落下する水の音までもを書きとめた画狂人は『あと10年、いや5年生かしてくれたら、真の絵描きになってみせる』と、絵魂は死を目前にいっそう飛翔し続けていたそうだ。
富士はそんな画家の魂が戻った場所のように静かで雄大だ。

さて、職人さんのお手並み拝見。
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by lime2005 | 2009-01-25 16:22 | 日記
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