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あえて、『小さな魔笛』・・・

あえて、『小さな魔笛』・・・_e0038778_23421388.jpg小さな小さな『魔笛』を聴いた。

音楽監督    天沼裕子
構成・演出   エッダ・クレップ

タミーノ     布施雅也
パミーナ    荒牧小百合
夜の女王・パパゲーナ 角田裕子
パパゲーノ・ザラストロ 中西勝之

シアターⅩ(カイ) 両国  

ご存知、モーツアルトの3大オペラの一つ『魔笛』。
おとぎ話がベースの楽しいこのオペラを一時間半ほどに再編した作品で、ドイツの大学で指揮法などを教えいらっしゃる音楽家の天沼裕子さんが取り組んだ子供も楽しめる本格的オペラだった。


演奏は木管三重奏(フルート・ファゴット・ピアノ)、登場人物はダブルキャストなのでたった4人。
台詞は日本語、歌は響きを大切にする為にドイツ語で(字幕なし)歌われた。

魔笛は音楽、劇性、歌唱全てにおいてグランドオペラに相応しい内容を持った大きなオペラなので、これを子供も楽しめる小さなオペラにというとさぞ制約が多くて大変だろうなあ~というのが、チケットを手にした時の印象だった。

舞台初日、小さな劇場の前5列ほどには桟敷席が設けられて、幼稚園ぐらいの親子さんも大勢みえていた。
音楽は天沼さん自ら弾くピアノに、フルートとファゴットの音色が重なる・・・室内楽的精妙さが生かされた演奏で『小さな魔笛』にはピッタリ。
初め、台詞の日本語といきなり歌われるドイツ語での歌唱に違和感があり耳が馴染まなかったが、次第に演出意図が細かい筋や登場人物の心理より、物語全体の流れにある事がわかって気にならなくなる。それに実際子供達はパパゲーノの天真爛漫な演技の可笑しさに声をたてて笑い、突込みをいれるその耳で『パ・パ・パの歌』の歌に聞き入ってしまっていた。
それは決して演奏中に声を出してはならない音楽鑑賞のマナーからも遠く、小さな芝居小屋の臨場感が溢れるようにオペラが進行する。

ただ、このオペラの持つ複雑な要素、登場人物の謎めかしさ(夜の女王やザラストロ)や主人公に与えられた哲学的な試練など、もう少し筋立てを整理すると判り易いかなあと感じた。実際のオペラにおいてはこの不可思議な要素こそがこのオペラの魅力と言っても過言じゃないだけに、構成・演出には苦労されたと思うのだが・・・。

若手の歌唱陣は皆様大健闘で、日本語の台詞から歌に移ると水を得た魚のようにのびやかでした(笑)

会場の両国界隈には江戸時代、隅田川添いに200軒もの見世物小屋がひしめいていて、自分達のオペラ(歌舞伎)に魅せられていたそうだ。それから250年経った現代にヨーロッパのジングシュピール(歌芝居)の面白さを持ち込んだ天沼さん。日本の若手歌手を育てたいというお気持ちも含めてその創造意欲が伝わる素敵な舞台だった。

今後もぜひ年一度ぐらいのペースで公演を続けていただけたらと密かに応援させていただきたい♪
by lime2005 | 2008-08-24 23:42 | 音楽
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